prolog
ふと、目が覚めた。
遠くで人の声が聞こえ、なぜだかとても気になった。
みんな騒いでいる。楽しそうだ。
僕の周りには誰もいない。寂しい。
森の向こうでは楽しくわらいあっている。
ぼくも仲間に入れて欲しくて、声のする方に向かった。
ぼくは暗い森の中を歩く。
てくてく
げろ 早 !
わからない。
てくてく
逃げろ!早く!
わからない。
ぼくは子供だから。
てくてく
「逃げろ!志貴!早く!」
ワカラナイ
ぼくは紅い広場に出た。
みんなおどったり、もえたり、ばらばらになったり…
とても楽しそうだ。
でもどうしてぼくを仲間に入れてくれないんだろう。
それが悲しい。
突然、ぼくの身体が大きく揺れた。
?ふしぎだな。うでがむねからはえてる。
「こふっ…」
痛い。なんでだろう?
ぼくはその場に崩れ落ちた。
起き上がろうとしても少しも身体は動いてくれない。
それなのに意識はしっかりしていて、身体と心が別れてしまったみたいだ。
可笑しい。
だんだん視界が薄れて行く。
あぁ・・・置いて行かれた心がやっと追いついてくれたみたいだ。
その時、視界に何かが入ってきた。
誰かの足・・・?
―どうやらぼくの事を見ているみたいだ。
どうしてか訊こうとしたら、足は既に後ろを向いていた。
離れて行く誰かの背中・・・
「 い た い 」
ぼやける視界の中
紅く染まった月がぼくを見下ろしていた
あぁ…な て 月 が き れ だ
い ぞ し は!
い ぞ!!
志 様 だ!
早 しろ!!
「志貴様の他に生存者は?」
「いません。志貴様にしても生きているのが不思議なぐらいの傷でしたから」
「そんなにひどいのか?」
「胸に大きな風穴が空いています。おそらく腕か何かで貫かれたのでしょう」
「ご様態は?」
「何故だかわかりませぬが、血は既に止まっています。
ですから生命維持に必要な最低量は残っているものと思います。
七夜の力でしょうか?」
「恐らくは…だが、そのおかげで志貴様が生きているのだ。
良しとせねばなるまい」
「…そうですね」
「私は志貴様と共に先に戻る。お主は生存者の捜索を続けてくれ」
「わかりました」
「生き残ることと、死ぬこと、どちらがよかったのでしょうか…志貴様」