その存在を知る物は無く。 その意思もまた虚像のようで・・・・・ 誰にも知られること無く。 彼はまた、誰も居ないはずの誰かの居る町をさ迷い歩く。 影絵の町に住まう蜘蛛 目の前に獲物が居る/でも誰も居ない 後をつける/影を追う 人気の居ないところまで追い込む/否、人などもとより居ない 誰とも知れない誰かを殺す/何も無い空間にナイフを奔らせる バラバラになった誰かを見る/されどソコには何も無し―――― 所詮夢の中で具現化されただけの存在。 この意思も、ただ奴が恐れているだけの悪夢の一欠けら。 表のような力も無いため、吾は自分すら殺すことができない。 無論、この悪夢の世界を殺すなど・・・それこそ論外だ。 ただ奴の悪夢を演じる道化。 死を纏い、ただ獲物を殺し歩くという、残忍で冷酷な殺人鬼という役を、ただひたすらに演じ続ける。 誰でもない誰かを殺す、 でもソコに『誰か』は存在しない。 ここは『個人』の夢。 かつてのような夢魔でも居よう物ならば、他者の意思を繋げることも可能だが――― 所詮コレは夢。 殺したところで、殺せたことには成りえない。 すぐに過去となる・・・そう・・殺された・・という夢の中の認識だけ。 有耶無耶なこの世界で、有耶無耶な殺戮者を演じる。 ―――――なんたる無念。 殺したと思えば、路地裏(げんば)に立っているのは自分一人。 また獲物を見つけおびき出し殺す。 それを愉快、と認識する・・・・いやさせられている。 吾は奴の悪夢、だからこそ、奴の望まない姿でなくてはならない。 人を愛し、平穏を望むなどもっての他。 人を殺し、殺戮の宴を望んでこその吾。 ――――――――誰も居ない町で、殺戮を望む・・・・・ ふと、空を見上げる。 この町は常に夜其れゆえの影絵の町。 そして上空には、存在不確かな"丸い物"。 この影を生み出す、唯一の光・・・・ 「吾を孤独と嘲笑うか? それとも・・孤高と崇めるか・・・?」 ―――なぁ、貴様はどう思う・・? 偽りの月よ・・・・・ 今夜も殺人鬼は徘徊する。 誰も知らない、誰も居ない影絵の町を・・・噂の『ひとごろし』として・・・・ <あとがき> 志貴の悪夢、七夜志貴の話でした〜。 彼が孤高なのか、孤独なのか・・・本人としてはどう解釈しているのか・・・ 理解してもらえない孤独か、理解不能な孤高か・・・ 拙者としては、独りって言うのは孤高も何も無く、やっぱりただの『孤独』だと思いますね、はい。 独りって、さみしいっしょ? え・・? 理由にならない? あはははは〜ではでは〜(猛ダッシュ)