こんな一日も












何故か違和感を感じた。

例えるならそう、誰かが寝ている俺の頭を優しく撫でている様な。

って言うかそのまんま?全然例えて無い?

――――――――まあいいや、ともかくそんな感じだ。



一体誰だろう?

・・・・・そうか!翡翠だ、翡翠に違いない!!

謎は全て解けたっ!!!

そうかそうか、ついに積極的に起こしてくれる様になったのか。

う〜ん、でもなぁ翡翠?

そんな事されると、起きるというよりは逆に寝ちゃうんだが・・・・・・・。

と、いう訳でおやすみ〜〜〜〜〜〜〜♪



・・・・・・・・って、バカーー!



翡翠が俺の頭を撫でる訳ないだろうっ!!

一体誰だ?

というか何で俺は頭の中でコントを繰り広げてるんだろう?

早く起きて、誰か見ればいいだけじゃないか。

ならば起きよう。

善は急げだ。

―――――善なのか如何かは知らないが。





「ふぁぁぁあ」

とりあえず意識を覚醒させる。

次にいつもどおり、サイドボードの上にある眼鏡を取る。

眼鏡を取る為に腕を伸ばし、眼鏡をスチャッとかける。

ここで重要なのは変身をしないという事だ。

どっかの光の巨人見たいにはならない。(←ウルトラ○ブン)





「あっ、やっと起きたな〜」

やっぱり翡翠の声ではなかった。

聞こえてきた声は、遠野家では決して聞けない声だった。

どこかのほほんとして、間延びした声。

その声を確認する為に体を起こす。

体を起こした先に居たのは・・・・・・・・・。





「アル・・・・トルージュ?」

「は?」

ん?何で俺はそんな事言ったんだ?

というか、アルトルージュって誰だ?

・・・・・・・・どうやら寝惚けている様だ。

全然見当違いの名前が出てくるとは。

いかんいかん、もっとシャンとしなければ。





「いや、おはようアルクェイド」

俺は笑顔で挨拶する。

アルクェイドも満面の笑顔で挨拶を返してくる。

う〜ん、なんて惚れ惚れする様な笑顔だ。

俺って幸せ者だなあ。

それじゃあ解決した事だし―――――。





「じゃあお休み♪」

俺は二度寝をするため、眼鏡を外してまたベッドに潜った。

正直に言って、眠い。

俺の体は、まだ惰眠を貪りたいのだ。

さっきから、『ネロ〜ネロ〜』と体の中から叫んでいる。

決してネロ・カオスではないぞ。

紛らわしいなぁ、と思いつつ、そのまま俺はスーッと眠りの世界に―――――。





「って入れるか〜!!」

「うにゃ!?」

猫化しながら、耳を塞ぐアルクェイド。

コイツは本当に吸血鬼か?

どちらかと言うと、猫という方がピッタリなんだが・・・・・。

まあそれは一先ず置いといて、それよりも―――――。





「どうして、アルクェイドがココにいるんだよっ!」

「私が来たから」

「それはそうだけど・・・・・もういいや、今何時だ?」

何か疲れて来た。

俺ももうちょっと免疫を付けとかないとな。





「ん〜と、九時」

は?イマナンテイッタノカナ??

九時と聞こえたんですけど・・・・・・。

いやいやきっと聞き間違いだな。





「ごめんアルクェイド。もう一回言ってくれないか?」

「だから九時」

「何だって〜!?」

「志貴、さっきからうるさい」

「あっ、ごめん・・・・・じゃなくてっ!!」

あ〜もうっ!既に遅刻決定だ!!

翡翠も何故今日は起こしに来てくれなかったんだろう?

くそっ、後で翡翠にはちょうきょ・・・・ゲフンゲフン、厳しく言っとかないと。

―――――え?何だって??自分で起きろだって???

起きれたら起きとるっちゅうねん!!

・・・・・・そんな事より、急いで着替えないと。

俺はクローゼットを開けて制服を取り出す。

その際、制服が何着もあった事は無視の方向で。

いちいちツッコンでいたらキリがない。

アルクェイドが見ている前だというのに、俺は急いで制服に着替えた。

十秒もかかっていない。

完璧!イッツ、パーフェクト!!

毎日の積み重ねの賜物だな。特に鬼妹のおかげかな?

あの妹は直ぐに髪を赤くするから、嫌んなっちゃうよ。

・・・・ってちょっと待て、アルクェイドが見てる前で・・・・・・・?





「キャ〜、変態〜〜」

「む〜、何よ。志貴の方が変態じゃない」

気づいた時は後の祭り。

俺は既に制服を着替え終わっていたのだった。

仕方がない、見られたものはしょうがない。

気持ちを一瞬でポジティブに切り替える。

気持ちを切り替えるついでに、アルクェイドの発言はサラリと流す事にした。





「それで、制服なんかに着替えちゃって何所行くのよ」

「は?何所って制服に着替えたら行く所なんて一箇所しかないだろ」

一体コイツは何を考えてるんだ?

・・・・何も考えてないかもしれない。

こういう時こそ脳天気という言葉を使うのだろう。





「バイト?」

「何でやねんっ!?」

良し!ナイスタイミングのツッコミだ!!

これは一流の芸人を狙えるかもしれない。

今晩辺り秋葉にでも話してみるか。





シュミレーション開始―――――。

「秋葉〜」

「何ですか兄さん?」

「俺芸人になるよ!」(歯をキラーンと輝かせながら)

「死にたいのですか?」

「ごめんなさい」





―――――シュミレーション終了。

・・・・・・ダメだ、死ぬ。

問答無用で死んでしまふ。

こうなったら、芸人の道は諦めるか―――――。





それにしても、確かにバイトには制服だけどさ。

―――――見てわからんか?

学生服着てバイトするか普通?

年齢がバレるやんっ!

・・・・・・・どうも、テンションが上がり過ぎたみたいだ。

深呼吸して気持ちを抑えねば。



ヒィ、ヒィ、フゥ。

ヒィ、ヒィ、フゥ。





「って、ラマーズ法じゃんかっ!」

「志貴さっきから騒ぎすぎよ。もう少し落ち着いたら?」

「えっ?ああ、悪い」

ちゃんと落ち着かないと。

・・・・・・・・・・・・・・良し。





「落ち着いた?」

「ああ、ちょっと暴走してたみたいだ」

「ふ〜ん、自覚あるんだ」

「まあな」

ココで俺たちの会話は途切れる。



・・・・・・・はて?

何しようとしてたんだっけ?

う〜〜〜〜〜〜ん。

思い出す、思い出す。



ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、チ〜ン!



ああ、思い出した。

俺が学生服に着替えたら、アイツが何所に行くの?って言ったんだった。





「本当に俺の行く所知らないのか?」

「うん」

「学生服に着替えたなら、学校に行くしかないだろう?」

「あっ、そうか〜」

いや、気づくの遅いし。

この格好のまま学校帰りと言って、お前の家に寄った事あるだろう?

まったくこのお姫様は・・・・・。





「でも、今日休みでしょ?」

「ハイ?」

今何か衝撃の一言を聞いた気がする。

―――――キョウヤスミデショ。

―――――きょうやすみでしょ。

―――――今日休みでしょ。

何で・・・・・・?





「何言ってんだよアルクェイド。今日は平日だろ?」

「志貴こそ何言ってるのよ。きょうは祝日よ」

「え?」

今日って祝日だっけ?

俺平日だと思ってたんデスケド。

俺の勘違い・・・・・・・?

そういえば、昨日―――――。





「兄さん、すいませんが明日私たち屋敷に居ませんので」

「ん?何で?」

夕食も終わり、食後のお茶を飲んでいる時に秋葉が口を開いた。

俺はお茶をテーブルの上に置いて、秋葉に尋ねた。





「折角の休みなのに会議があるんです。本当は行きたくないのですけれど・・・・・」

「そっか、うん分かった」

「すいません」

「いいよ」

やった〜!!

明日はじっくり寝れるぞ〜!!!





「くれぐれも言っておきますが、私たちがいないからといって自堕落な生活を送らないようにしてくださいね」

「っ!?―――――え、エスパー?」

「兄さんの考えることなんて大体分かります。いいですね?」

「うい」





―――――ってな事があったっけ。

だから今日は翡翠が起こしに来てくれてなかったんだ。

何で忘れてたんだろう?

―――――不思議だ。





「という訳で、デートしよっ!」

「どういう訳だよ」

「いいじゃん。ねっ、お願い」

「うっ―――――」

何でそうやって俺を上目遣いで見るかな〜?

そんな顔されたら断れるわけないだろう。

ああ、もう―――――反則だ。





「わかった、わかったよ。すればいいんだろ」

「えへへ〜」

全くこのお姫様ときたら自分勝手なんだから。

まあそこが良い所なんだけど。



制服から私服に着替えて自分の部屋を出る。

―――――アルクェイドは先に窓から出て行った。

階段を下り、靴に履き替えて玄関を出る。

その際に鍵は掛けないでもイイかな?

とか思ったけどしっかり掛けておいた。





「決して妹が怖いからじゃないぞ」

「誰に向かって話してるの?」

「―――――ん?ああ、気にするな」

自分でも何で空に向かって喋ったのか分からない。

ボケたかもしれない。

この年でボケは困る。

まだ俺はピチピチの十七歳だ。

これからというのにボケ始めてはやってられない。





「どこに行くんだ?」

屋敷の前の無駄に長くキツイ坂を下りながら、アルクェイドに尋ねる。

本当にこの坂は疲れる。

家の中を強化するより遠野家の財力でこの坂を無くせばいいのに。

・・・・・・・今度秋葉に言ってみようかな?





「ん〜映画にしよっか?」

「仰せのままに」

俺とアルクェイドの一日はこうして始まったのだった。









「ふ〜、面白かったね〜」

「そうだ・・・・・なぁ、そういえば何見たんだっけ?

「え〜、忘れたの?あれは・・・・・・・・何だっけ?」

「オイ」

「え〜と、『激しく踊る大捜査隊』だっけ?」

「どんな隊だよっ!?」

「違ったっけ?『千と千尋のハゲ隠し』だっけ?」

「そりゃまた随分と親切だな」

まあ、思い出せないけど何かを見た、とだけ言っておこう。


俺たちが次に向かったのはデネーズだ。

決してデ○ーズではない。





「いらっしゃいませ〜何名様ですか?」

「二人」

「禁煙席と喫煙席がございますが?」

「どっちでもいいです」

「こちらへどうぞ」

表面上だけ愛想の良いウェイトレスに案内されて、席に座る。

席についた後メニューを見て適当に頼んだ。

もちろん俺の財布の中の金額の許容内でだ。









「ふ〜、美味しかったね」

「なぁ?」

「駄目よ志貴。こういう時は話を合わせないと」

「そうだな」

―――――ちょ、ちょっとそういうのは終わってから話してくれませんか?

「「うるさいっ!」」

―――――スイマセン(汗)













「寒いね〜」

「もう冬だからな」

時刻は時期に五時を回ろうとしている。

この季節五時を回ると暗くなってくる。

太陽は西に沈み、東には輝くほどの月が顔を現してくる。

ツメタイ風が吹いた。

寒風が一層冬を際立てる。

夜の帳が下りてくる中、俺たちしか居なくなった公園で二人ベンチに座っている。






「暗いね〜」

「ああ」

夕日が完全に沈み月が支配する時間になった。

光源は街灯と空で照らす、綺麗な月と瞬く星。

夜の闇に合い間って神秘的な雰囲気を出している。





「―――――」

ドキッとした。

何気なく隣のアルクェイドの横顔を見ただけなのに。

アルクェイドは宇宙を見上げていた。

空にある月を宇宙にある星を。

その姿はヒドク―――――儚げだった。

今にもアルクェイドが闇に溶けて消えていきそうだった。

俺は―――――。





「志貴?」

―――――手を、アルクェイドの手をギュッと握った。

そのまま溶けて消えないように。

その場所に居るのを確かめるように。

アルクェイドの手を握った。

彼女もそれが分かったのか握り返してくれた。



もう放さないように。

もう離さないように。

もう独りにしないように。

―――――そんな意味合いを込めながら。





「ありがとうね、志貴」

「何が?」

二人空を見上げながら口を開く。

月は綺麗な円を描いていた。





「今日突然誘った事」

「いいよ、慣れてるから」

「うん♪それじゃあ今日は帰るね、志貴も早く帰らないと妹に怒られるでしょ?」

「もう六時か・・・・そうだな。じゃあここでお別れか」

時計の針は直に六時を指そうとしている。

冬の夜だけあって外を歩いている人は少なくなっている。





「じゃあね♪今日は楽しかったよ」

「なんだかんだ有ったけど俺も楽しかったよ」

「「じゃあ(な)(ね)」」

俺は公園を出て遠野家へ帰る道を歩いていく。

さっきも言ったけど、こういう日も偶にはいいかも知れない。

アルクェイドとこうやって過ごす日もね♪











そんな一日だったが―――――家に帰ると地獄の様な目に会ったのはまた別の話。







あとがき
ほのぼのです!
ギャグでもシリアスでもありません。
ほのぼのなんです!!・・・・・・・ほのぼのって事にしてください(涙)
それにしても、終わりが中途半端な感じがしますね(汗)
そこは勘弁してください(滝汗)
シエルは?
と思った人もいると思いますが、シエルは・・・・・。
一旦バチカンへ帰りました。
決してこの話の都合上って訳ではありませんよ(苦笑)
それではこの辺で〜♪