手紙が届いてから2日後
アルクェイド様、秋葉様、何処にいらしたのかレンちゃん、翡翠ちゃん、私の面々は夜が明けるよりも早く
遠野家の居間に集合していました。
今日は――――――――――
志貴さんが帰ってくると記した日
氷月
〜第五話:絶叫〜
「何も、こんなに早く来ることは無いでしょう・・?」
「だって・・・・志貴と早く会いたいんだもん・・・・」
そう言うアルクェイド様は迷子の幼子の様でした
「・・・・・・」
そのことにうそ偽りはないと悟ったのか、秋葉様もそれ以上何も言いません。
いや、言えなかのでしょう。
秋葉様も・・・・私も、翡翠ちゃんも同じ気持ちだったから。
秋葉様なんて「やつれたなんて知られたら、恥ずかしいじゃないですか!」と・・
この2日間で見事(略奪使用済み)に復活をなされました。
使用した輸血パックは・・あは〜使用人程度の私からはとてもとても・・。
「志貴・・・ほんとに帰ってくるよね・・・・」
「帰ってきます」
不安げに尋ねるアルクェイド様にきっぱりと答える翡翠ちゃん。
それに私も続いた。
「志貴さんは約束を破ることは絶対しませんから」
そう――――
8年前のあの約束を、彼は守ってくれたのだから。
そっと、髪の後ろに結んだ白いリボンに触れる。
それだけで、なんだかくすぐったいような気分になるんです。
「そう・・だよね・・
志貴は・・・約束は絶対守るもんね・・・」
それでも不安が消えないのでしょう。
アルクェイド様は自分に言い聞かせるようにそう呟いてました。
「でもさぁ・・・志貴ってば一体何処で何やってたんだろうね?」
朝食中アルクェイド様は誰ともなしに疑問を口にしてきました。
「知りません、どうせくだらないことに決まってます。
本当に、今日という今日は・・・・・・!!!!」
よっぽど腹が立ったのでしょう
秋葉様、髪が少し紅くなってます。
ああ・・ナイフが飴細工のように・・。
「まぁまぁ、秋葉様、きっと志貴さんにも何か理由があるんですよ」
「理由!?
連絡もなしに15日間も無断外出するのに一体どんな理由があるっていうの!!」
ああ・・・志貴さんに出した助け舟は秋葉様により粉みじんに打ち砕かれてしまいました・・・。
ちなみに、力いっぱい握り締められたのでしょう。
ナイフもフォークも多分もう使えません。
・・・形状記憶合金に代えましょうかねぇ・・。
いえ、いっそ超合金Σに・・・。
志貴さん、覚悟しといたほうがいいかもしれませんよ・・・・。
でも、こんなに私と翡翠ちゃんを心配させるんだから。
帰ってきたら、私からもお仕置きですからね、志貴さん♪
地下室の準備は万端です♪
でも・・・・
志貴さんが帰ってくると知っただけで、みんなこんなにも元気になるなんて・・・
やっぱり、あなたは凄い人なんですね。
志貴さん。
朝食を終え、また居間で志貴さんを待つこと2時間。
その人は突然現れました。
そう、突然に。
先ほどまでだれもいなかった私の隣に、まるで最初から居たかのように・・・・・
西洋の、教会などでみる神父様の着るような聖人服、袖が少し長いみたいですけど
そして、
額に十字架の描かれた白い仮面を付けていました。
はっきり言って変態さんですね。
そんな奇想天外な格好の人が突然現れるもんだから
その場の全員が沈黙ちゃいました。
・・・・その沈黙をいち早く破ったのはアルクェイド様でした。
「埋葬機関・・・!?
そんな・・・私に気づかせずどうやって・・・・」
かなり驚かれたのか目を見開いてます。
レンさんもどこか落ちつかないようです。ちょっとおろおろしてます。
秋葉様とアルクェイド様は直ぐに席を立ち、臨戦態勢に入ってらっしゃいます。
私も、邪魔にならないよう即座に翡翠ちゃんとレンちゃんを連れて壁際に離れました。
「・・・・・・」
変態さんは答えません。
「埋葬機関・・・?
ああ、兄さんの先輩の・・・確かシエルとかいう人のいる組織のことですね。
・・・そんな方が何か家に御用ですか?」
キッと睨みつける秋葉様。
「・・・・・・」
相変わらずダンマリの変態さん。
「用が無いのなら、さっさと帰ってくれませんか、私は今とても機嫌が悪いんです!」
秋葉様、髪、真っ赤っかにして怒っちゃいました。
「・・・・・・・」
秋葉様の変貌を見ても微動だにしない変態さん。
ですが・・ほんとに無口ですね、この変態さん。
「私もすこぶる機嫌が悪いの、さっさと帰らないと―――
殺すわよ・・・」
・・・あはーアルクェイド様、目がマジです。
「・・・・・・・」
変態さんの右手が動くと同時に身構える秋葉さまとアルクェイド様。
でも変態さんが袖から取り出したのは――――
単なる、小型のテープレコーダでした。
変態さんはそれをテーブルの上に置き、スイッチを入れました。
その間も、秋葉様とアルクェイド様は油断なく構えています。
――――――次の瞬間―――――
テープレコーダから聞こえてきたのは―――――――
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
志貴さんの―――――――――
「がぁぁぁぁあぁああぁあぁぁぁぁああ!!!!!!」
張り裂けんばかりの絶叫―――――――