IF

 

 

 

 

 

 

前書き

 このSSには、『Fate/Stay night』の世界を著しく歪めているアホな世界です。

 原作のイメージを壊したくないという方、或いは原作のネタバレ………は、ほぼ御座いませんが一応覚悟していただきたいです。

 それでも読みたいという奇特な………失礼。変わった趣味をお持ちの方は、どうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんわ、シロウ。私はイリア。

 イリアスフィール・フォン・アインツベルンよ。

 そしてこの子はバーサーカー。ヘラクレスって言った方が分かりやすいかな?」

 

 銀髪の幼い少女が、朗々と語る。

 少女の傍らに居るのは、身の丈2メートル以上はある厳つい男。

 対峙している士郎とセイバーにも、強大な敵の出現に冷や汗を流した。

 

 

 

 

 

もしもバーサーカーヘラクレスが、別のクラスだったら?

 

 

 

 

 

アーチャー編

 

「こんばんわ、シロウ。私はイリア。

 イリアスフィール・フォン・アインツベルンよ。

 そしてこの子はアーチャー。ヘラクレスって言った方が分かりやすいかな?」

 

 強敵の出現に、士郎とセイバーの表情が引き締まる。

 

「下がってください、シロウ。敵は強大です」

 

 セイバーが一歩前に出て、士郎にそう指示する。

 士郎としても異論は無いのか、少し後ろに下がった。

 

「ふふん、無駄だよ。アーチャーの攻撃範囲からは全然抜けてないよ」

 

 イリアの言葉と共に、ヘラクレスが武器を取り出す。

 弓兵の名に相応しく、取り出しのたのは弓。その弓は彼の巨体よりも大きく………って、え?

 

「それはバリスタだろうが!!」

 

 バリスタ:紀元前4世紀に、アレクサンダー大王が用いたのが有名。

      木造の巨大な弓で、ボウガンを大きくしたものを想像すれば大体合っている。

      矢だけなく、石なども飛ばして攻城兵器として利用された。

 

「大体、どこから出したんだ!!」

 

「細かいことを気にしたら駄目よ」

 

 士郎の叫びは、イリアに一言で斬って棄てられた。

 どこが細かいんだ!! という主張をしてみても、今度は黙殺されてしまった。

 

「殺っちゃえ、アーチャー」

 

「クッ! させません!!」

 

 セイバーとヘラクレスの戦いが始る。

 だが最後に、士郎は一言だけ言いたかった。

 

「バリスタは台に乗せて使うものだぞ」

 

 色んな意味で、士郎も疲れたようだ………………。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

セイバー編

 

「こんばんわ、シロウ。私はイリア。

 イリアスフィール・フォン・アインツベルンよ。

 そしてこの子はセイバー。ヘラクレスって言った方が分かりやすいかな?」

 

『えぇ!?』

 

 少女・イリアの言葉に、士郎とセイバーの叫びが重なる。

 

「な、何を言っているのですか!?

 セイバーは私です!! 貴方はバーサーカーでしょうが!!」

 

「チ…ガウ。ウォレ、せいばー」

 

喋れたの!?

 

 ヘラクレスの言葉に、イリアが驚きの声を上げる。……………どうやらヘラクレスの言葉を初めて聞いたらしい。

 そんなイリアの驚きを無視して、ヘラクレスは何処からか剣を取り出した。

 やたらとデカイ…………彼の身の丈はありそうな鉄の塊は…………。

 

「…って、斬馬刀!? ヘラクレスってギリシャ神話の英雄じゃないのかよ!!」

 

 斬馬刀:戦国時代以前に、敵将を馬ごと倒す為に考案された巨大刀剣。

     数ある刀剣の中でも最大最重を誇る為、使いこなせた者は居ないとされている。

 

「斬馬刀ノへらくれす。イザ、参ル!!」

 

「クッ! 良いでしょう。あくまでセイバーを名乗るというのなら、この私を倒していきなさい!!」

 

 何故か聖杯戦争よりも、セイバーのクラス争奪戦に様相が変わってきたらしい。

 馬鹿馬鹿しくも、本人達はいたって真剣な戦いの幕が切って下ろされた。

 

「絶対ヘラクレスじゃないだろ…………」

 

 二人の戦いを眺めながら、士郎のツッコミが虚しく響き渡った。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

 ランサー編

 

「こんばんわ、シロウ。私はイリア。

 イリアスフィール・フォン・アインツベルンよ。

 そしてこの子はランサー。ヘラクレスって言った方が分かりやすいかな?」

 

『…………………』

 

 イリアの言葉に、士郎とセイバーは口を開けたまま呆然とイリアとヘラクレスを見ていた。

 

「ふふん、余りの恐ろしさに声も出ないみたいね」

 

 士郎とセイバーの様子に、イリアは自慢げに言う。

 

「違う!! 何だそのデカイ柱は!!」

 

「失礼ね! ただの柱じゃなくて、神殿の柱よ!!」

 

「どの道、じゃねぇか!!!

 

 士郎のツッコミがお気に召さなかったらしく、イリアは頬を膨らませた。

 

「むー! 殺っちゃえランサー!!」

 

「クッ! 下がってください、シロウ!!」

 

 ヘラクレスとセイバーが同時に飛び出す!!

 セイバーの持つ不可視の刃『風王結界』とヘラクレスの(槍と認めたくない)が激突する!!

 

バゴォォォォン!!

 

 まるで石のような無機物が砕け散る音と共に、周囲に何かの破片が飛び散った。

 

ウヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!!!

 

 まるで獣の咆哮のような叫びが響き渡る。

 ヘラクレスが何かをしたのかと士郎は警戒したが、よく見るとセイバーが何とも形容し難い表情で立っていた。

 

「大丈夫か、セイバー?」

 

「え、えぇ、シロウ。私は大丈夫なのですが……………」

 

 チラリとセイバーが視線を送った先に、士郎も自然とそちらに視線を向ける。

 そこには両手両膝を地面につき、滝のように滂沱の涙を零しているヘラクレス。……………シュールだ。

 

「な、何があったんだ?」

 

「それが、私の剣と……その……彼の柱がぶつかった時…………彼の柱が砕けまして」

 

 よく分からないが、ヘラクレスにとってあの柱は大切な物だったらしい。

 それが完膚なきまでに破壊されて……………このような状況に。

 

「男の子は泣いちゃ駄目よ!!」

 

「ウォウウォウウォウ………」

 

 イリアの叱咤に、嗚咽(?)するヘラクレス。

 もう何かも如何でもいいやと思ってしまう、士郎だった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

 アサシン編

 

「こんばんわ、シロウ。私はイリア。

 イリアスフィール・フォン・アインツベルンよ。

 そしてこの子はアサシン。ヘラクレスって言った方が分かりやすいかな?」

 

ちょっと待て!!

 

 イリアの言葉に、士郎とセイバーの二人から待ったがかかった。

 

「むー。何よ、命乞い?」

 

「違う!! そいつの何処がアサシンなんだ!!」

 

 士郎がヘラクレスを指差しながら、声高に叫んだ。

 

「何処から如何見てもアサシンじゃない」

 

「如何見たら、その威圧感丸出しの大男がアサシン(暗殺者)に見えるんだ!!」

 

「むー。だったら証拠を見せてあげるわ。アサシン、『気配遮断』よ!!」

 

「『気配遮断』?」

 

「アサシンの固有スキルです。気配を完全に絶ち、見えているのに見えないように錯覚させることが出来るのです」

 

 セイバーの言葉を聞いた瞬間、ヘラクレスの気配が完全に消えた。

 確かに見事なまでに気配は消えていた。…………いたのだが…………。

 

「ふふ、これでもアサシンだって認めるでしょ」

 

「いや、そこに居るだろ」

 

 あっさりとヘラクレスの居場所を見破る士郎。

 これにはイリアの方が驚きの表情になる。

 

「ど、どうして分かったの!?」

 

「確かに気配は消えた…………消えたんだがな、威圧感だけ綺麗に残してるんだよ!!

 他の一切の気配を消して、見事なまでに威圧感だけ残してるだろ!! 馬鹿か!!!」

 

 どうやらクラスの固有スキルを持ってしても、ヘラクレスの威圧感を消し去ることは不可能らしい。

 その後、イリアの主張は続けられたが、ヘラクレスがアサシンだとは最後まで認められなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

 キャスター編

 

「こんばんわ、シロウ。私はイリア。

 イリアスフィール・フォン・アインツベルンよ。

 そしてこの子はキャスター。ヘラクレスって言った方が分かりやすいかな?」

 

嘘を吐くな

 

 イリアの言葉に、士郎とセイバーの声がはもった。

 

「な、なんでよ。ほら、ちゃんとローブだって被ってるよ」

 

「俺には姿を隠す、外衣にしか見えないぞ。

 …というよりも、何処の世界に2メートル以上のムキムキマッチョの魔術師がいるんだ!!」

 

 かなり大きな外衣だが、ヘラクレスの身体を隠すにはまだ足りないようだ。

 士郎の主張にセイバーは何度も頷き、イリアは不満げな顔になる。

 

「むー。だったら魔術を見せてあげるわ、やりなさいキャスター」

 

ウオオオオォォォォォォッ!!!

 

ボワッ!!

 

 ヘラクレスの咆哮と共に、巨大な火球が生まれる。………というか、今の叫び声は詠唱だったのか?

 

「どう? 一兆度の火球よ。骨も残らないんだから」

 

 ふふん、と自慢げなイリアの言葉。一兆度の火球…………奇しくもゼッ○ンと同じだ。

 

「セイバー……………俺はアレをキャスターと認めたくない

 

「任せてください、シロウ。私も同じ気持ちです

 

 士郎とセイバーの心は1つとなった。…………………その理由は、少々アレだったが。

 兎も角、今は聖杯戦争よりもヘラクレスがキャスターではないということを証明する為に、二人は戦い始めた。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

 ライダー編

 

「こんばんわ、シロウ。私はイリア。

 イリアスフィール・フォン・アインツベルンよ。

 そしてこの子はライダー。ヘラクレスって言った方が分かりやすいかな?」

 

 イリアがそう言うものの、彼女の周りにサーヴァントは居ない。

 

「居ないじゃないか」

 

「あれ? もう! 勝手に何処へ行ったのよ!!」

 

 頬を可愛らしく膨らませながら、キョロキョロと周囲を探すイリア。

 

ズンッ………

 

 突然重い何かが、大地を踏みしめる音が響いた。

 慌ててそちらを向く、士郎とセイバー。

 そこに居たのは漆黒の馬に乗った大男。男に相応しいほどに、漆黒の馬も巨大だった。

 二人は男から発せられる威圧感に、息を呑んだ。………………そして。

 

「あ、ライダー」

 

えぇ!?

 

 イリアの言葉に、士郎は思わず叫んでしまった。

 ライダーの下に駆け寄り、自慢げに笑った。

 

「どう? これが私のサーヴァント。ライダーのヘラクレスよ」

 

ラ○ウだろっ!!!

 

 士郎の言葉に、イリアはハテナ顔。ヘラクレスは何故か焦ったような顔になる

 

「むぅ、とにかく殺っちゃえライダー」

 

 イリアの言葉に応じて、ヘラクレス(仮)は馬から下りる。

 セイバーが『風王結界』を構え、互いの空間に緊張が走る。

 

「ハァァァァァァッ!!」

 

 セイバーが裂帛の気合と共に踏み込む!

 放たれた矢の如く、セイバーは一直線にヘラクレス(仮)へと向かっていく。

 ヘラクレス(仮)は構え、ごく自然な動作で歩いていき……………そして。

 

ドガァッ!!!

「ガハッ!?」

 

 いきなりセイバーが吹き飛ばされた。

 何が起こったのか士郎には分からず、セイバーも困惑していた。

 そんな二人を余所に、ヘラクレス(仮)は一言だけ呟いた。

 

奥義 無想転生

 

やっぱりラオ○だろっ!!!

 

 士郎の言葉に○オウ(確定)は、『あ、やべっ』という顔して。

 無言で首を振った。どうやら喋ってないのと、ラ○ウではないと主張したいらしい。

 士郎は当然の如く食い下がり主張を続けたが、ラオ○(確定)は大仰に肩を竦めたりして否定し続けた。

 その時、完全な隙が生まれたのだ。その隙を、少女が見落とさなかった。

 凄まじい魔力が収束する。慌てて全員の視線が、一人の少女に集まった。その少女は…………セイバー。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!!!

 

 閃光が全てを灼き尽くし、映像も、音も、起こったことさえも飲み込んで消えた。

 初めて見たセイバーの宝具。究極とも言える一撃は、大地を穿ち、濛々と土煙を巻き上げた。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

「だ、大丈夫か、セイバー」

 

「ハァ……な、何とか。

 一か八かの賭けでしたが、何とか勝てたようです」

 

 セイバーの元に士郎が駆け寄ると、彼女は力なく士郎に倒れこんだ。

 全ての力を使いきり、文字通りギリギリで勝利を捥ぎ取ったのだ。あのラ○ウ(確定)から。

 

「よくやった、これならあのラ○ウ(確定)にだって…………!?」

 

 そこで士郎はとんでもないものを発見した。

 土煙の中、段々と浮かび上がる倒したはずの男………………。

 

「ば、馬鹿な!? アレでも倒れないというのか!!?」

 

拳王は決してひざなど地につかぬ!!

 

 全身が血塗れでありながらも、ラ○ウ(確定)はそう叫んだ。

 しかし、ダメージは大きかったらしく、彼の命は…………………。

 

「感謝するぞ、娘。我は遂に死に場所を得た」

 

 普通に喋っていることに、疑問が生まれたが、士郎は何も言わない。何故なら彼もだからだ。

 ラ○ウ(確定)は拳に最後の力を籠めて、天へと突き上げた。

 

わが生涯に一辺の悔いなし!!!

 

 こうして、彼の戦いに満ちた人生は、幕を閉じた。

 

 

 

 

 

―終幕―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? これで終りなのかよ!?」

 

 

 

終りったら、終りです。

 

 

 

 

後書き

 

 いや〜、はっはっはっはっはっ(汗

 一応言っておきますが、ヘラクレスは他のクラスになれるだけの実力はあったそうです。

 ただ、キャスターだけは適正がないそうなので、100%私の妄想です。間違っても公式ではありません。

 兎も角、こういうこともあったかもしれないというIFのお話です。

 まぁ……………最後のは流石に無いかもしれないですけど(核爆

 え〜〜〜っと、では!(逃げッ!