この作品は黒獣様作の『七夜覚醒』を私が勝手にSS化したものです。
したがって、「こんなの黒獣様の作品じゃねぇ!!
横暴だぁ!!」と言う方は読む事をおすすめできません。
それを理解した上でお読みください。
七夜覚醒
ゴキ! ゴキュ! メキ!
満月が支配する闇夜の空間に肉と骨が砕かれ噛み切られる様な嫌な音が響き渡る。
その音の発生源である白髪で紅い瞳の巨漢の男、ネロ・カオスは唇をニヤリと曲げた。
――く、喰ってる・・・コイツ、体の中で喰ってやがる
ネロ・カオスの混沌に取り込まれた志貴は目の前に繰り広げられる光景に目を見開いた。
青い浄眼には、紛れもない恐怖が浮んでいる。
――俺も・・・ああやって喰われるのか
そんなことを考えながら志貴は目の前で展開される光景を見続けることしかできなかった。
混沌に飲み込まれれば、真祖の姫君であるアルクェイドですら脱出は困難なのである。
ましてや、ただの人間である志貴が脱出できることなど99%ありえない。
「ほぉ・・・まだ意識があるのか・・・さっさと狂ってしまえばよいものを」
ネロ・カオスは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
顔の右半分が消滅しているが、まったくダメージを受けていないようだ。
――俺も喰われる・・・どこの誰かも分からない少女のように・・・
そんなことを考えている間も、ネロ・カオスの捕食は続く。
――何百人もの人間のように・・・俺も喰われる・・・
志貴の青い瞳に涙が少しだけ浮んだ。
――怖い、怖い、怖い、怖い、怖い!!
そんな志貴を見て、ネロ・カオスはさらい顔を歪める。
完全に勝利を確信した顔に。
死ね
――殺される
死ね
――殺される
シネ
――コロサレル
しね
――ころされる
死ね
――殺される
死ね!!
――殺される!!
その瞬間、
ズバァ!!
志貴の胸の部分が混沌に切り裂かれた。
少しラフに着こなしていた学生服が破け、胸が露出する。
「!」
破けた学生服の下から出てきたのは、古い大きな傷だった。
もう何年も、何十年も前に出来た傷なのだろうか。
少なくとも完全に感知しているようだ。
――胸の傷・・・古傷・・・
その大きな古傷の上に、先ほど付けられた真新しい3つの切り傷が出来上がっている。
それも大きくて、結構な深さのようだ。
――そう言えば昔・・・こんな事があったっけ・・・
志貴の脳裏に、昔の出来事が蘇る。
自分と同じ名前を持ち、彼が反転した時に、その場に居合わせた自分を殺し、いやらしく唇を歪めていた彼の顔が脳裏に蘇る。
――アイツガワラッテ
志貴が見たネロ・カオスは確かに笑っていた。
だが、自分にはどうする事も出来ない。
自分はこの場で、アイツに殺されるのだから。
――殺される・・・・・・殺される?
「はは、はは」
――誰が・・・誰に?
「あははは、あははははは」
――殺される?
「あはははははははは!!!」
唇を歪め、狂気に彩られた志貴。
先ほどとは、まったく逆の雰囲気を放つ。
ネロ・カオスは志貴が笑い始めたとき、ついに狂ったかと思った。
だが、それは間違いなのである。
彼はすでに、狂っているのだから。
――ああ、間違いない・・・
志貴は狂気に染めた顔のまま、愛用の『七ツ夜』を手の平で回転させて逆手に持ちかえる。
戦闘において、自分がもっとも得意とする持ち方にするのは至極当然のこと。
暗い闇の中で、一際目立つ赤い点と線が見て取れる。
そう、志貴は知っている。
世界はこんなにも、死に満ちているということを。
あの昼のホテルの時、アルクェイドを芸術的なまでに切り刻み17分割した時のような鮮やかな動きで志貴は自分を覆っている混沌を完膚なきまでに『殺した』。
――間違いなく・・・
ネロ・カオスの顔に驚愕の二文字が浮かび上がる。
何しろアルクェイドですら脱出困難な混沌を一瞬の内に完膚なきまでに殺したのだ。
驚かない方がおかしい。
そんなネロ・カオスに志貴は顔を向けた。
完全に狂気に染まりきった顔に、一際目立つその蒼い瞳。
「さぁ! 殺しあおうか、ネロ・カオス!」
一方的な惨殺劇の幕が上がる前、志貴は思った。
――コイツは俺に殺される
あとがき
鬼神「今回は、黒獣さんのWebコミックの『七夜覚醒』を勝手に書かせてもらいました」
七夜「ふん。この俺がネロ・カオス如きに手こずるとはな」
鬼神「いや・・・あんたね」
七夜「だいたい、あの時あのロリコン外道野郎がイランことをしなければ・・・」
鬼神「・・・・・・・・(汗)」
七夜「まぁ、いい」
鬼神「いいんかい!」
七夜「では、これにて失礼する」
鬼神「・・・・・・・・・・」