意識が、反転する・・・
自分が・・自分ではない・・妙な感覚・・
俺(吾)は・・・吾(俺)は・・・?
ああ―――、思い出した・・
吾は・・・・
吾は七夜・・・七つに夜をもたらすものなり・・・
そうだ・・俺は七夜・・志貴。
至高に唄われし、殺人貴なり・・・
眼が・・覚める・・・
飛び込んでくるのはツギハギの世界。
問題無い、吾等七夜はこの能力を持ちいて『魔』を狩る者。
己が能力を御するは当然の事・・・故に・・
眼を開いていながら、閉じるイメージ・・そう・・『力』を閉じる・・・
不快だったツギハギの線が消える・・いや消した。
窓を開ける。
時刻は夜・・いや草木も眠る丑三つ時・・・
冷たい月光が闇を薄く照らしていた。
ベッドの横に置いてあった七ツ夜をポケットにしまい、窓際に足を掛け跳ぶ。
高さは精々7〜8m・・何の問題も無い。
足音も無く地に降り立つ。
ここは「遠野」の屋敷・・吾は害なる『魔』を狩る者、いま害無き鬼に用は無い。
感応者たる巫浄にも・・用など無い。
故に、吾は外に出た。
この意識が浮上することはもはや無いやも知れぬ・・それは別に構わない。
吾は所詮、血に束縛されし者。
自由奔放たるこの「志貴」の生き方を害する気は毛頭無いし、吾も多少気に入っていること・・
だが・・何であれ吾はここに浮上した・・
ならば、最後に残りし、吾一族が無念晴らそうではないか・・・それで消えるならば思い残すことも無く逝ける。
そう・・これが最後の夜であろう・・・
吾が七夜志貴たる最後の―――、いや、違うな・・・
夜の街を駆ける。
ビルからビルへ、時には木を使い獣の如く駆ける。
七夜の森での移動に比べれば楽なものだ。
・・・と、見知った者が眼に入った・・・いや見知ったは可笑しい、遠野志貴の知り合い・・と言うべきか。
西洋の聖職者が着る特有の黒と白の法衣。
吾の先輩・・・にあたる存在だ。
奴の周りには15〜6体ほどの死徒・・残党狩りか。
しかし、多勢に無勢か少し押され気味のようだ・・まぁ奴の戦闘力ならば問題はあるまい。
・・・・・
・・・・
吾も、どうやら奴(志貴)の影響が強いようだな・・・、まだまだ、甘い。
慣性の法則を無視し方向を急激に変え、即席舞台に向かう。
・・・赤い鬼と戦う前準備と言うことにしよう。
足音も、気配も一切無く、吾はゴミどもの後ろに迫る。
シエルの派手な戦いぶりで、ゴミどもの気は全てそこに向けられている。
迫り来る絶対的な死に気付くことなく・・
――――なんて、無様。
『眼』を開く、ツギハギの世界が目前に広がる中、
なお黒く・・どす黒く「線」と「点」に塗りつぶされた「死体」。
死に塗りつぶされてもなお、「生」にすがりつく執念は認めるが・・・
吾に言わせれば滑稽以外何者でもない。
・・・せめて最後は、極彩と散れ。
まずは目の前の二体、どこを引いても線と点、解体するのは容易い。
すれ違いざまに頭、両腕、両足、を胴体から分離させ、合計12の肉片に変える。
無駄な分解はしない、魔を殺すことによるに快感が強いが、それは戦闘には必要ないこと。
肉片が地に付く前に次の標的に近づく、相も変わらず隙だらけだ。
これでは、準備運動にもならぬではないか・・・・・
ホントウニ・・・ツマラナイ・・・
「もういい、さっさと死ね」
一気に速度を上げる。
極端な加速に残像が残る。
瞬きよりも早く七ツ夜を振るう。
流れる風景の中、ひたすらに線と点をなぞりつくした。
・・・・
・・・・
「・・遠野・・くん?」
シエル、彼・・今は七夜の具現である志貴に戸惑っていた。
あまりに壮絶なまでの殺気・・それを普段から温厚な彼から噴出しているのだ。
別人に見えても不思議ではない。
・・恐怖は、姿を禍々しく捻じ曲げ、対象に映すのだから。
「・・・・・」
無言のまま、その場を去ろうとする。
「あ、ちょ、ちょっと!遠野くん!!」
シエルが志貴の肩をつかもうとしたとき。
「え・・?」
志貴の姿が、陽炎の如く消えうせた。
「今宵汝が見たものは一時の夢に過ぎん、夜が明け、日いずる時。
おのずと夢は覚めるだろう」
まるで唄うように、その声だけが裏路地に響いた。
本当に、今日はどうかしているのか・・
それとも、これは運命なのか・・・・
吾は再び移動する足を止め、ただ一点を凝視していた。
公園
いや、公園そのものに用は無い。
用があるのは・・・
----コロセ―――
血が騒ぎ立てる、巨大な、巨大すぎる魔に反応し・・いや、怯えるように騒ぎ立てる。
一時は流された衝動・・だが今の吾にはただの遠吠え。
「魔」の衝動でなくとも分かる。
『白』
ただただ純白の、それでいて何者も寄せ付けないほどの白・・・・
そんな、異質な気配。
「今夜は、本当に饗宴だな・・・」
おのずと、足は動いていた。
公園、時間が時間なだけに人一人いない。
そう・・人は・・いない。
冷たい月明かりの下、真祖の白き姫はただ何をするでもなく立っていた。
それだけで、なんと美しいのだろうか・・・
「真祖の姫よ」
「え・・!?」
ふと、突然かかった声に振り向こうとするが・・
「後ろは見るな・・汝が遠野志貴を好いているならば」
「え・・志貴? え・・?」
知った声にあたふたとながら答える。
背後からかかるのは志貴の声、故に彼女は従った。
「はじめまして・・かな。お前とこうして会うのは」
「あなた・・誰!?」
ばっと、後ろを振り向く。
しかし・・・
「振り向くな・・と言ったはずだが・・」
再び聞こえてくる声は彼女の背後からだ・・・
「あなた・・・何者・・?」
アルクェイドの額に嫌な汗浮かぶ
今の時刻は夜、月は満月
正に真祖としては最高の時間・・・
だというのに、自身は相手の気配も探れず、悠々と背後を許してしまっているのだから・・・
「吾は面影糸を巣と張る蜘蛛・・・。そう、影に息す蜘蛛」
「蜘蛛・・・?」
「危害を加えるつもりは無い、蜘蛛は所詮蜘蛛・・猛獣、はては獅子なぞ狩りはせん」
「いったい何を言って・・」
「まぁ、聞け。吾は今宵お前に謝罪に来た」
「謝るって・・あなたが誰だかもわからないってのに?」
「それで構わん」
「志貴の声だけど・・別人みたいね」
「言ったはずだ。吾は蜘蛛、闇に住まいし凶蜘蛛だと・・・」
「む〜、よく分からないけど、敵じゃないのね?」
男の声が志貴だからか、アルクェイドから緊張感が薄れていった・・
「ああ」
「それで?謝りたいことって何かしら?私には覚えが無いんだけど・・?」
「殺してすまなかった。・・・ではな、それだけだ」
静かな、とても静かで穏やかな声が、公園に響き渡った・・・
「え・・?」
呟きと同時に後ろを振り返る。
そこには・・誰もいなかった・・・・
「・・・・志貴・・?」
呼んでも返事は無い。
ただただ、冷たい月が空をぼんやりと照らしていた・・・・
「久しぶり・・かな」
月の冴える中、虫の音も無く、その声は妙に響く。
「・・・・・」
男・・・年のころは20代後半だろう。
巨躯な肉体と、異常なまでに引き締まった肉体。
顔は右半分が長い前髪にさえぎられている。
男は目の前の青年を見つめたまま、呟いた。
「仇か?」
ただ一言、呟く。
「そうだ。・・そして」
月に照らされる中、青年は呟いた。
「吾の最後のけじめとやら・・だ」
「・・・・」
鬼神は何も語らない。
無言の表情のまま、ゆっくりと立ち上がる。
「ならば・・始めよう。
小僧、名は?」
「――――――七夜。ただの、七夜だ」
吾は七夜が血に縛られし者、故に"七夜"。名前などもはや無い。
故に一族の総称、それこそ吾が名・・・・それこそがあるべき名・・・
舞台は幕を開ける。
かつて最強と唄われた、今は無き暗殺の一族・・その最高傑作と
日本最高位の"鬼"、全てを薙ぎ払う赤い鬼神との・・
最終幕。
観客はいない、だが・・一人・・いや唯一つだけ。
冴え渡る蒼い、蒼い月が、冷たい瞳で達観する。
楽しむではなく・・・ただただ、達観する・・・・
「さぁ・・・・殺し合おう」
<あとがき、だと思われるもの>
黒獣(以下黒):んがーーーーーー!!!
朱い月(以下朱):なんだ、騒々しい・・
黒:ああああああああああああ、文章がおかしい!文法がおかしい!
そして何より喋り方がおかしい!!!
朱:何をわかりきったことを・・・
御主が書いたのだ、あたりまえであろう。
黒:うーわ、酷くない?
朱:ふん、まだ甘いほうだ
黒:ぐぅぅ・・・
朱:それで、どうするのだ?
黒:何が?
朱:これの続きだ
黒:漫画で描こうかと思ってます。
朱:・・・正気か?
黒:うん、多分
朱:・・・・・・・・・・・
黒:何でしょうか、この間は?
朱:御主が描いたところで面白くも何も無いと思うが・・・
黒:大丈夫だって。だらだらゆ〜〜〜っくり描くから。
朱:はぁ・・御主という輩は・・・
黒:何さ?
朱:描いたところで誰も見ぬと思うがな・・・
なんとも能天気な輩だ
黒:ふんだ!!絶対見てくれるもん!!!
誰かが!!!
朱:・・・だそうだ、もしこんな無駄に長いあとがきを読んでくれたならば。
BBSにカキコしてほしい
黒:あ、それ拙者のセリフ!!
朱:文で良いか漫画がよいか書き込んでくれるとありがたい。
黒:だから・・!
朱:ではな、次の機会が在れば、また再び会おうぞ。
黒:勝手に閉めるなぁぁぁぁぁぁ・・・って声が小さく・・ああーーー